サーカス団

ここはイタリアのサーカスのテントの中。
僕はサーカス団の新入り団員だ。
サーカスお道具の手入れや物の管理をしている。
19歳にしてサーカスに入れたのは幸運だった。
中々狭き門だったので、受かった時は大はしゃぎした。
そんな僕だけど、手入れをしている時に古びた鏡を見つけた。
いつもは仕事が忙しくて気にも留められないが、今日は定休日で団員達の練習だったので今姿鏡の前にいる。
(磨いたら使えるようになるかな)
僕は雑巾とバケツ、洗剤を持ってきて拭いてみることにした。
十分後、やっと姿鏡は本来の輝きを取り戻した。
僕は掃除道具を片付けに行った。
続き:鏡が輝き、光った
ー姿鏡は急に光を出していたー
僕が鏡の前に戻ると、黒ひげを口元の左右に付けてるダンディな中年男性が鏡に写っていた。
「うわ!」
僕が声を上げるとその男性が話しかけてきた。
「名は何という、わしはレオナルドだ!早よ答えて見ろ」
「え、僕はガブリエーレです。おじさん誰?」
「わしは楽団の創業者だが?君は誰だ」
「創業者?」
僕は信じられなかった。だって、今は2025年で創設者が生きてたのは1890年だと聞いていたからだ。
「なんで創業者が写ってて、話ができるんだ」
「ウハハ、皆がしっかりやっているか心配になってやって来たんじゃよ」
レオナルドは、低いダンディな声で笑いながら言った。
「君は誰なんだ?見ない顔だな」
「え、はい。新入りの団員です。今年入りました」
「うむ新入りか、新入り君ここの経営状況は良好か?それだけが心配でな蘇ってきた」
「多分大丈夫かと、僕が見る限りお客様も入ってますし」
「おおそうか、それは良かった。みんな元気か?誰も辞めてないか?」
「良く分からないですが、そんなことは聞かされてないです」
レオナルドは、真剣な面持ちで僕の話を聞いていた。
「レオナルドさんの時代はどうだったんですか?ここの雰囲気とか」
「ああ、にぎやかだったし、皆仲が良かったよ。なんせ、設立時の初期メンバーだからね」
「そうか、そうですよね。そらそうか」
僕は新入りだから皆さんと打ち解けられてなかった。羨ましかった。
「どうやったら、先輩と打ち解けられますかね?」
「うむ、仕事の質問から入ってみたらどうかね?熱意のある新人は可愛いもんだから」
「ああ、なるほど……」
続き:鏡の正体
僕はレオナルドさんと暫く会話をしていた。
久し振りに人と話して僕は気持ちが和らいだ。
「おい、新人、もう帰るぞ。早く帰る準備しろよな」
男性の先輩が僕を呼びに来てくれた。
「お前、さっきから誰と話してんだ」
先輩がこちらに来た。
「あ、これ!AIの鏡じゃねえか!?こいつは不良品だと思って閉まってたのに」
「AI!?え、そうなんですか!」
「そうだよ6年前に試作として知り合いの科学者から貰ったんだけど、受け答えがワンパターンで入り口に置くのを止めたんだよ」
「これ、お前が綺麗にしたのか?」
「はい、すみません勝手なことして」
「きれいに掃除出来てんな。いいよ!欲しけりゃあ持って帰ってもいいぞ」
僕は先輩の言葉に驚いた。
「え、いいんですか!」
「お前、楽しそうだったからいいよ。どうせ使わないし」
「ありがとうございます!」
「お前もあんな顔なるんだな。いつもそんな顔じゃないから新鮮だった」
「え、そうですか?」
「俺らが上手く話しかけてられないからダメなのは分かってた。ごめんな」
「い、いえ、とんでもないことです」
「いや、悪かった。良かったら飯でも行くか?奢るから」
「本当ですか!ありがとうございます。是非」
そうやって僕は先輩と打ち解けることができた。
(ありがとう。レオナルドさん)
お終い