3分で読める自作ショートショートです。通勤時間などすき間にサクッと読めちゃう、日常系な超短編ストーリー。
今回のテーマは、「中学三年生の女子生徒が小さいころからの夢をそっと胸にしまっていました。しかし、同級生の”ある”行動をきっかけに”始まりの拍手”を求めていく」お話です。少女の勇気ある姿勢に感動する一作です。
始まりの拍手

中学三年生の春、私は悩んでいた。
進路用紙は白紙のままだ。
本当は歌手になりたいと幼稚園生の時から願っている。
懇願するなら、早くなれば?そんな声が世間から聞こえてきそうだ。
簡単なことではないと、分かっている今日この頃。
不安でいっぱいの日々と思うけれど、どうせこの不安はしれたものだろうとも思う。
生活が保障されてる暮らし、勉強すればおっけいな暮らし、こんなもので
「不安です」
なんて言えない。
両親に夢のことは話せる中だけど、こんなに本気なんて、なんか言えなくて。
けど、けど、とりあえず公立の高校に行けばなんて、思えない。
だって、必死にがむしゃらに夢を追いかけてる人なんて五万といるもん。
私は今放課後の教室で自席に白紙の進路用紙を置いている。
椅子に座って腕組みをしている。
私は中学三年生、石井しずかというスクールカースト二軍女子であった。
学校での仲のいい友達も6~7人の男女友達がいたし、SNSのフォロワーも300人は軽く超えている。
でも、自分の夢は友達には言えなかった。
普通に日々のあったことをSNSに上げるだけの日々だった。
好きな歌、歌ってみたなんて上げられない。
続き:一年発起
ある日学校の友達が声を掛けてきた。
「今日さ、SNSに歌ってみたあげるんだけど、付き合ってくれない?どうかな?」
「うん、付き合うよ。カラオケ行こう」
私と女友達のリサは放課後カラオケに行った。
「何を歌うの?」
気軽に聞いてみた。
「知りたい?」
「う、うん!」
リサは照れ臭そうに
「オリジナル曲だよ、作詞と作曲したんだ」
「え、本当に」
内心では嫉妬した。
「すごいじゃん!聞かせてよ」
「ありがとう!」
リサは満面の笑みでこちらに向いた。
それから、本当に録音をして、リサは翌日にはアップをしていた。
「今日は手伝ってくれてありがとう。助かったよ」
今日、リサの隣で曲をずっと聞いていたら、私も挑戦したくなった。共に強い焦燥感に駆られた。
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数か月後
やっとのことで1曲目をアップ出来た。
反応は超薄い物だったけど、ゆっくりでも進んで欲しい。
その後は、月1回のペースでアップを続けた。
中学三年生の秋の深まる頃のある日
アップしているSNSにコメントが来た。
【こんにちは、音楽素敵ですね。良かったら歌手になりませんか?ここへ連絡してください】
(怪しいな。でも褒められたのは嬉しい)
単純に聞いて貰えて嬉しいと思った。そして聞いてくれたうえで褒められるって心地が良い。
夕食後、母親に相談した。
「しずか、こんなことをやっていたの?本当に歌手になりたいのね」
「お母さんが調べるからスマホ見せなさい」
母親は一緒に怪しいところからではないかパソコンで調べてくれた。
「本当にある事務所みたいだね。明日電話をしてあげるわ」
「ありがとう。お母さん」
「それにしてもちゃんと行動して偉いね。勉強もしながら偉い」
「でも、ちょっと成績落ちてしまった。ごめんなさい」
「いいのよ。風邪でも引いたのかって心配はしてたけどね」
「ありがとう」
母親が褒めてくれたのは、意外だったので拍子抜けした。今まで言えなかったのが勿体無いと思う程だった。
実際に母親が電話してみたら、そのコメントをくれた人は本物のスカウトマンだった。
電話では、来週の土曜日に事務所に招待された。そこで、審査をして正式に歌手になれるかを決めることらしい。
「え、ほんとに!嬉しすぎる!マジ感動」
「良かったわね。練習頑張りなさい」
母親はそう言って、頭を撫でてくれた。
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審査当日に私は母親と芸能事務所を訪れた。
(緊張する~)
受付の人に声を掛けて入室できた。
直ぐに事務所のスタッフの方が来てくださった。
「お待ちしておりました。今日はご多忙の中お越しくださりありがとうございます」
「こちらこそよろしくお願いします。石井しずかです」
「こちらの部屋でお待ちください。準備が出来ましたらお呼び致します」
「はい。宜しくお願いします」
緊張のし過ぎで体がカチコチになっていた。
数分後、審査の時間になった。
私は三人の大人に作詞作曲した音楽を発表した。
「はい、ありがとう」
「いい歌ですね。中学三年生にしては良い歌詞とメロディーが付いていたね」
二人の大人が良いリアクションをしてくれた。
続き:デビュー出来るか?
「あの、しずかさんはこれが一番良い出来と思ってる?」
三人目の薄い黄色レンズのメガネを付けた口髭を生やした男の人が聞いてきてくれた。
「はい、最大限を出しました」
私は自信を持って言った。実際、今日は上手く歌えた方だと思った。
「うーん、だとしたらデビューは難しいかな」
一言、男性は言って部屋を出て行った。
「え、どうしてですか?」
咄嗟に理由を聞いていた。
「本当ですよ、良かったのに何でですか?」
初めに良いリアクションをしてくれた男性が追い掛けて訳を訊いてくれた。
「これでは売れないからだ」
「そ、そんな」
場が一瞬にして、静まり返った。
その場に耐えられず、つい言った。
「私、プロにふさわしくなれるように努力します。養成所に通せてください」
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二年後
今日はプロの歌手になっての初コンサート
私は、石井しずかは
『始まりの拍手』
を貰っていた。
お終い
※この物語はフィクションです。
