ショートショート:自作小説始めました 第一作目月と雲

月と雲

むかし、むかし、月が地上に目をやると一人の男がいました。

どうやら、こそこそと何かをしているみたいでした。

キョロキョロ振り向いては、土を見ていました。

月は男に興味を持ち、暫く観察することにしました。

男は、風呂敷包みからシャベルを取り出しすごい速さで土を掘っていきました。

月は

「凄い速さと真剣な顔で怪しげな行動だな」

月は良くないことが起きるのではと心配になりました。

注意深くみていると男はピタリと手を止めてその場から去りました。

(一体何をしてたんだ)

月はすぐに雲に声を掛けて昼間中、男を追いかけて欲しいと頼みました。

雲は了承してくれました。

続き:男の家での出来事

朝になり、雲は男を追って家の上まで行くことができました。

雲は耳を澄ませていました。

「おっかさん、具合はどうかね」

「今日はマシだよ。あんたそれにしてもこの薬どうやって手に入ったのさ」

「あー、これは俺が刈ってきたんだよ」

【刈ってきた】

その言葉に雲は不信感を抱きました。

(すぐに月に報告しないといけない)

その後も男を見張ったがこれと言って怪しい動きは無かったのでした。

夜になり、月が出てきたので雲は昼間のことを報告しました。

「やはり、何か企んでいることがあるのかも知れない。今夜男に声を掛けよう」

暫くすると、男がやってきました。

シャベルを取り出したのを見計らって

「何をやっている」

月は大きな声で話しかけました。

男は身体を震え挙げていました。

「なんだなんだ!空から声がする……。なんて恐ろしい」

「何をやっていたんだ。白状しなさい」

「白状?恐ろしい変な声がする」

男は震えが止まらないようで、中々口を割らなかった。

「盗みか、何かしているんだろう」

月が問い詰めると

「盗みじゃねぇ、大事な銭を隠してただけだ」

にわかには信じ難い主張を男がしたので、月は頭を抱えました。

「本当か?こそこそしている意味が分からない」

「なんも嘘なんかじゃねぇ。こうしないと泥棒に入られて、ケガするのはこっちだ」

月は、男の言うことが本当なら何故物騒なことになっているのか疑問でした。

男の家はポツンと離れた一軒家だったので盗まれる心配はないと思っていたからでした。

「泥棒に入られるのは何故だ、理由を聞かせて欲しい」

「そんなのは簡単だ、騙して取った銭だからだよ」

月は、ポカンと開いた口が塞がりませんでした。

「それを盗んだ金というじゃないのか‼」

「そんなこと言ったって、騙すつもりじゃないのにそうなってしまったわけで」

男は言いにくそうに言葉を詰まらせました。

続き:月と雲と男の会話

「俺は人の役に立ちたくて商売をしてたんだ。けどある日儲け話があるって持ち掛けられて」

「それで、どうしたんだ」

月は具体的な話が聞きたくて仕方ありませんでした。

「その儲け話が迷信を信じさせようとするやり方で」

「ありもしない怪物が家にいるから不幸に会うって客に言ったんだよ」

「そんなでたらめ、何故嘘の儲け話と思わなかったんだ?」

月は神妙な面持ちで聞きました。

「俺も不運が続いていたから信じてしまったわけさ」

月は

「そんな事情があったのか、でも何故土に埋めていたんだ?」

「埋めねぇと、騙した人が家に襲い掛かってくるぞって儲け話持ち掛けたやつに言われてんだよ」

月と雲は口を揃えて

「なんてこった」

言いました。

お終い