握手

目の前に大好きな人がいる。話したいけど恥ずかしくて迷ってしまう。
どうやって話しかけようかここ半年迷っていた。
「優也、おはよう!一緒に学校まで行こう!」
あ、あの子はクラスで一番可愛い杉浦クララちゃんだ。彼女は中学一年生とは思えない程の高身長で、もう既に165㎝だった。あと、スタイル抜群で胸もふくよかに見える。ちゃんとお腹も引き締まってそうだった。髪の毛はポニテール結びだった。
今日もクララちゃんに負けた。悔しかった……。今日こそは誰よりも先に優也君に話しかけようと思ったのに!
「はぁ~」
「杉浦Bだ!杉浦の落ちこぼれの方だ。暗くて陰気な奴がため息付いてるぞー」
私は振り返った。そこにはいじめっ子で馬鹿な康大が私を見て笑っていた。
「その言い方やめなさいって何回言えばわかるの!このアホ康大」
「あー、お前の方が馬鹿だから!中間テスト俺の方が勝ってるし」
「はぁ~!たった一点で何言ってんのよ!」
私は顔真っ赤にさせながら、康大を追いかけた。
追いかけていく途中、クララちゃんと歩く優也君の顔がちらっと見えた。
何だか、苦い顔をしていた。
(きっと、軽蔑されたんだ。こんな朝っぱらから追いかけている女子論外なんだ……)
午前中の授業はクララちゃんと優也君のことで頭がいっぱいだった。
二人がもし付き合ったら私は学校行けなくなりそうだなぁとか、優也君のことを嫌いになりそうだとか色々考えて頭がこんがらがっていた。
午前中の授業が終わり、昼休みの時間になった。
私が食べ終わると、優也君が急に立ち上がった。
私は気になったので尾行することにした。
暫く付いて行くと、中庭の花壇に腰掛けてうな垂れている優也君がいた。
続き:優也君を尾行したら……?
「はぁ~、康大より負けているのかな?」
(何を言っているだろう?)
私は気になり優也君の方に無意識に近づいた。
「あ、杉浦さん」
優也君は驚いた顔をしていた。
私も驚いた。
「何しているの?」
私は急にバチが悪くなった。
「え、えっと、うーん」
「杉浦さん?」
「うーん、困ったなー。何してるんだろう、花が綺麗だね」
「え、あ、うん。そうだね」
私は適当に中庭に植えている花を褒めた。
「もしかして、杉浦さんが水やりしているの?」
「え、あ、まさか」
急に優也君に質問されて戸惑った。この半年で優也君とちゃんと会話したことがなかったからだった。
一瞬で夢が叶った。
「そう、杉浦さんって几帳面だから水やり頑張ってるのかと思った」
「几帳面!?初めて言われた、そんなこと言われたことなかった。ありがとう」
「そうなの!僕は好きだな杉浦さんのそういうところ」
「え!」
(今好きって言った?どういうこと?)
「いやー、何だか急に暑いね。どうしたのかな」
「今、秋だよ!むしろ涼しくなっているよ。大丈夫?」
私が心配したら、急に優也君は笑い出した。
「杉浦さんは面白いな!クララとは違うね」
「え、クララちゃん?」
「クララちゃんのことが好きなの?」
私は咄嗟にそんなことを聞いてしまった。
「え、クララは僕のいとこだよ」
そう言って優也君は微笑んだ。
「え、いとこ?知らなかった!名字が全然違うから分からなかった」
優也君は私の肩に手を置いて
「僕が好きなのは杉浦さんだよ」
一瞬時が止まった。
「わ、私も」
続き:夢が叶った、まさかの告白
私が返事をしようとしたら
「ちょっと、何やってんだよ」
康大の声が聞こえた。まずい、はやし立てられる……。
「抜け駆けは良くないぞ、俺より先に」
(は?)
私は意味が分からなかった。
「杉浦、俺も好きだ」
「え、えー」
「何でよ!私は優也君が好きなの!」
「あ、やっと言ってくれた」
優也君が嬉しそうに言った。
「ちぇ、俺の方が長かったのに」
「優也、こいつを頼んだぞ」
「言われなくてもそうするよ」
優也君と康大は握手した。
それから、13年後
私と優也君は結婚した。
今日は康大とクララちゃんがやってくる。
「今日は二人が来るね。嬉しい話って何だろう」
「そうだね。僕も楽しみだ」
インターホンが鳴った。
「康大、クララちゃん」
「久し振り、華ちゃん」
クララちゃんが笑顔で私の名を呼んでくれた。あの時は考えられなかった。
「おう、もう人妻だな。頑張れよ」
康大は照れながら祝福してくれた。
二人をリビングに招いた。
「優也、報告がある」
「なんだい?」
康大が真剣な顔で優也に迫った。
「クララを嫁に欲しい」
「康大、本気か」
「おう」
二人は真剣な顔をして沈黙をしてから
【握手した】
私の時と同じように。
お終い