
落下
空を見上げると、快晴だった。暫く空の様子を見ることにした。
僕は運動場に居て校舎の壁に背持たれていた。
数分の時が流れた。
一瞬のことで分からなかったが、何かがひらひらとこちらに降りてきた。
「傘か……。それにしてもどぎつい柄物の傘だな……。」
僕はボソッと呟いた。
その瞬間
「キャー落ちるー」
「え?」
ドン!
突然墜落してきた物体は重かった。
「ごめんなさい。お怪我はありませんか?」
僕は腕が痛すぎて返事が出来なかった。
「え!本当に大変ー」
落ちてきた物体は耳元で喚いていた。
「ほ、保健室……。」
目が覚めると、天井が白かった。横に首を傾けると緑色のカーテンに囲まれていた。
「ここは」
「木本さん、目が覚めたみたいです」
女の人の声が聞こえた。
「木本さん、分かるかな?ここは病院だよ」
男の人の声がした。多分医師だろう。
「あー、病院ですか……。え!なんで?」
「木本さん、腕が折れていたからね。事故の様子をこの女の子に聞いていたんだ。合ってるか確認したくて」
僕が女の子に目をやると
「ご、ごめんなさい。こんな大ごとになるなんて」
「物体が女の子だったなんて」
僕はボーっとしながらも状況を整理していた。
「この子が転落してきたであってるかな?よく軽傷で済んだね、危なかったよ」
「はいそうです。空を見てたら傘が落ちてきて、そのあと落ちてきました」
医者はため息を付いた。
「君、ほんとに危ないことだったんだよ!なんでこんなことを」
「ごめんなさい。傘で飛べるかなって思ったら試したくなって」
医師は眉間にしわを作り
「馬鹿か!そんな非現実的な危ない目をして!大体見た所、あそこの生徒に見えない」
僕も女の子を見る限り、同じ学校の生徒には見えなかった。水色のゴスロリ様なファッションにふあふあしたフリルが所々引っ付けていた。
「君はどこから来たの?誰なの?」
続き:何者?どうやってきた?
僕と医師がジッと彼女を見たせいか、彼女は恥ずかしそうに体をもじもじした。
「わ、私は未来の日本から来ました。年齢は十七歳です」
「は!?何言ってんの」
僕と医師の声が揃った。
「だって、本当のことだもん。私は二千百二十五年の日本から来たの」
彼女は顔を赤くさせながら必死に言ってきた。
「はい?大丈夫?頭打ってない?先生、この子精密検査した方が……」
「あぁ……」
医師は、言葉を失っていた。
「お嬢ちゃん、今検査枠が空いているか聞いてくるね」
医師は足早に出て行った。
「嘘じゃないんです……。何回もタイムトラベル旅行していて」
「タイムトラベル旅行?なんじゃそりゃ!ますます精密検査が必要な気が」
彼女は泣きべそをかきながら、僕に小ぶりな手帳を出してきた。
「これ見てください。パスポートなんです。信じてください」
僕はパスポートと呼ばれる手帳を開いた。
【二千百二十五年四月~二千百二十五年五月まで二〇二五年の日本滞在可能】
【二千百二十三年六月~二千百二十三年七月まで一九〇〇年の日本滞在可能:済】
【二千百二十二年五月~二千百二十二年六月まで二二〇〇年のイギリス滞在可能:済】
「うわ!なんだこれ!これは一体」
僕は見てはいけないものを見てしまったみたいだった。
「信じてくれた?頭おかしく無いでしょ?」
僕は冷や汗を出しながら考えた。
「どうしたの?お詫びと言ってはなんだけど、これあげるから許して」
彼女は、そう言って僕の手に何かを置いた。
「これはね、未来のイギリスで手にしたお金の様な物と私の時代のお金だよ」
僕は、手のひらを見た。
続き:未来のお金って言うけど
【大き目の葉っぱと小型の器械】
「なにこれ?ふざけてる?ただの葉っぱとヘンテコな器械じゃないか!」
僕は少し大きな声を出してしまったみたいで他の患者から睨まれた。
「何言ってんの!これはれっきとしたお金だよ」
彼女は顔を真っ赤にして言った。
「もういいよ、帰ってくれ。頭まで痛くなってきた」
「分かったわ。せっかく会いに来たのに……。」
僕は目を逸らして彼女を追いやった。
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「折角、学者に会いに来たのに残念だった」
「あの子って本当に木本先生なのかな?ノーベル物理学賞取ったって嘘よ」
「私の時代に敬られているなんて信じられなくなった……。お金なんて作ってないわよ」
女の子は未来のお金と言った、小型の器械を手のひらでコロコロと転がした。
「残念な旅行だったな」
お終い