3分で読める自作ショートショートです。通勤時間などすき間にサクッと読めちゃう、日常系ワクワクな超短編ストーリー。
今回の3分ショートショートは、「“勇気の種”がぺちょっと張り付き、根を生やした先は専業主婦の六十歳女性の家でした。“勇気の種”は何を思い、彼女の家に降り立ったのでしょうか?」話です。読めば心がほっこりする楽しい一作です。
第二の人生の勇気の種

ここに勇気の種があります。
誰も水をやらなくても発芽して成長していきます。
ある一定程度、成長すると勝手に葉っぱが取れます。
すると、取れた葉っぱが何処かに飛んでいきます。
ふあふあと漂う姿は自由の象徴の様でした。
その葉っぱは一軒の家にぺちょっと引っ付きました。
その家の屋根に引っ付くと又すくすく育ち出しました。
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朝、主人と家から出ると、とても大きな木が屋根の上に根を張っていました。
「ちょっと、貴方見てあんなところに大木があるわ」
「ほんとだ、なんでこんなことに……。」
「ほんと大変なことだわ。業者に頼んで木を切って貰わないとこの家が押しつぶされてしまうわ」
「そうだな。電話しといてくれ」
そういって主人は会社へと行ってしまいました。
「ふー」
ため息を付いて、家の中に入りました。
私の名前はカヨ、六十歳の専業主婦です。
ここ十年、ふと家庭のことに関心がない主人に対して何とも言えないもやっとした気分に襲われる。
(もう人生を二人で作っていく気がないのか?)
(私の事には関心なんてなくなってしまったのか?)
手鏡を見ながら、またため息を付きました。
(そもそも、容姿が著しくおばあちゃん顔になってきてる)
手鏡に映った自分の姿は、法蓮線が口の端に二本くっきりとあり、目尻には茶色のシミがポツンとありました。
顔にはポツポツとシミや皺も出来ていて、髪の毛も白髪がポツポツと所どころに出来ていた。
(こんなにも老いていたのか~なんだかショックだな)
カヨは自分には何一つ誇れるものや確かな技術力がないことが心の奥底で引っかかっていました。
数日後、電話をして早速業者が来てくれることになりました。
「奥さん、この木はすごいですね。気づいたらこんなに大木になってたんですか?」
業者の兄ちゃんが見上げながら目をぱちくりさせて言いました。
「そうなのよ。一晩で大きくなっちゃって。家が潰れそうよ」
「はー、早速切りますね」
「お願いします」
カヨは家の中で待機することにしました。
お茶を飲みながら一息ついていると
ガラガラガッシャーン
「いてー」
すごい音と業者の声がしたので慌ててカヨは家の外に出ました。
「ちょっと、大丈夫⁉」
心配して駆け寄ると
「この木、生きてるっす。やばいっす」
業者の兄ちゃんの額には脂汗がたらたらと出てきました。
「え、どういうこと?」
聞きなれない単語を口にされたので聞き返した。
「は、早く救急車をお願いっす」
「あ、はい。救急車ね、今呼ぶわ」
数分後救急車が来て、付き添いのため一緒に救急車に乗りました。
その時業者の兄ちゃんから言われた言葉が不思議な出来事でした。
勇気の種が教えてくれたこと
業者に付いて行った病院からの帰り、カヨは木が兄ちゃんにしたことをよく考えてました。
「あの木が太い枝を使って兄ちゃんを蹴飛ばした。どういうこと?そんな不思議なことある?」
カヨは一人で考えても埒が明かないと思い、家に着いたら木に話しかけることにしました。
家に着くと木の方に向かって
「木さんなんでそんなことするの?何か伝えたいことがあったら教えて」
木はもちろん返答なんかしませんでした。
カヨは憂鬱な気分で夜になるまで過ごしました。
カヨはいつものように主人が帰る前に眠りにつきました。
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夢の中で誰かに呼び止められました。
「カヨさん、毎日楽しく過ごしてる?どうかな?」
カヨが振り向くと頭に双葉を載せている緑の服を着た妖精のような男の子が立っていました。
「あなた誰?」
カヨが尋ねると
「あの木の妖精だよ、勝手に寄生してごめんね。あの木をどかしたいでしょ?」
男の子は小さくて身長が五センチほどに見えた。ブラウンの髪の毛がふあふあしていて触り心地そうでした。
「そうね。どこかへ行って欲しいわそうじゃないと家が壊れてしまうもの」
「そうだね。こんなことしてごめんね。けどカヨさんに気付いて欲しかったんだ。本当にやりたいことやなりたい人生」
「だから、僕は住み着いたんだ。許して」
男の子は可愛くウインクしました。そのウインクで許せそうでした。
「どうやったらわかるのかな?したいことはもう何十年もやってないから分からないわ」
「大丈夫だよ。朝までにやってみたいと少しでも思ったことが起きたら届くようにしたから」
「何かやりたいことを思い出しながら朝を迎えてね」
そういって、身長が五センチの男の子はパッと消えました。
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カヨが目覚めると、家のチャイムが鳴りました。
したいこと、なりたい自分に今からなる
玄関を出たら、宅配がやってきて頼んでもない商品が届きました。
ハンドメイドのキットでした。
段ボールには手紙が添えられていました。三つ下の妹からでした。
『お姉ちゃんのことを思ってふと送ってみたくなったよ。良かったら作って欲しいな』
「ありがとう、作ってみるわ。妖精さん」
数時間後
毛糸で出来たレターポーチが完成しました。
完成した嬉しさとお礼に妹に電話をしました。
妹も嬉しそうに話を聞いてくれました。
「お姉ちゃん、私の友達に編み物教えてあげられない?友達が最近始めたみたいで苦戦して困ってるみたい。どうかな?」
「え、そうなの?いいの?」
「え、やってくれるの?ありがたいわ」
その後本当に妹とその友達がやってきて編み物を教えることになりました。
それからは忙しい日々を過ごすようになったカヨは笑顔の日々を送っています。
あの大木はいつの間にか消えました。
また、あの木はどこかの人を勇気づけて笑顔にさせているのだろう。
ふあふあと漂う自由の象徴のように……。
お終い
※この物語はフィクションです。

