ショートショート:自作小説第五作目書きました。題名:風を読む男

風を読む男

むかしむかしある所に、風を読む男がいました。

その男は村の副村長でした。

村長は他の村の村長との会議によく出ていましたので、実務的なことは副村長であるその男が代行してました。

村人は何か困ったことがあると男に相談しに行きました。

「副村長様、最近山にいる動物に野菜を食べられてしまいます。どうしたらいいでしょうか?」

男は、力強い両腕を組むと暫く考えてから

「明日、雨が降るようだから対策しないといけないと思っていたところだ。よし、分厚い目の布を掛けておこう。明日一日皆で対策を練ることにしよう」

「副村長、明日雨が降るんですか?こんなに快晴なのに、信じられない」

「ああ、降る。風が私に語り掛けているからね」

村人が驚くのも無理はありませんでした。空は雲一つ無かったのです。

「明日、太陽は出ないからにわとりが鳴いたら会議を開こう。明日は全員呼んでおいて」

「あ、はい……。」

男は村で一番高いところにある自分の家に来るように伝えました。

村人は戸惑いながらも他の村人に伝えに行きました。

続き:土砂降りの雨

次の日、男が言ったみたいに雨でした。しかも、バケツをひっくり返した様な雨でした。

「副村長、すごい雨です。雷が落ちそうな天気です」

「だろ?皆を集めといて良かった」

村人達は驚きと感謝でざわざわしていました。

副村長に村人はお礼を言いました。

「みんなが無事で良かった。会議をしよう」

男は会議を開いて村人全員を守ったのでした。

驚くことに会議の間はずっとザアザアと土砂降りの雨でしたが、会議が終わるころには太陽が出ていました。

「副村長、凄いです。晴れてきましたよ」

「そろそろ、大丈夫だな。みんな今日は作戦会議ご苦労だった」

「副村長、ありがとうございます。安全に今日を過ごせました」

村人皆が副村長、副村長と慕っているものだから一人だけ男のことを疎ましく思っている人がいました。それは、村長でした。自分が他の村に出かけている間に村長の座を取られるのではと懸念もあったし、自分よりも人気なのがそれだけでも悔しかったのです。

ある日男は村長に呼ばれました。

「話ってなんですか?」

「君に副村長を就いてもらってから三年が経ったね?」

「はい、そうですが……」

「そろそろ、村長の座を譲ってあげようと思ってね」

男は戸惑いました。副村長の仕事が気に入っていましたし、自分の後副村長を誰に任すのかが気になります。

「誰に副村長を任せるのですか?」

「この俺がするんだよ。入れ替えだよ」

「え、村長が?いいんですか?」

「いいよ。明日から村人に伝えることにするね」

「急ですね、大丈夫ですか?」

「あー、大丈夫だよ。気にすることはない」

次の日から男は村長になりました。村長になったので、他の村に出掛けることが多くなりました。

続き:半年後!?

半年後、村人は不満を口々に言うようになっていました。

「前みたいに村長が副村長の方が良かった。今の副村長は全然解決してくれないんだもんな」

「そうそう、何より天気が全然当たらなくて困ってしまう」

前の村長は不評になっていました。人気が駄々下がりです。

前の村長は村人からの不評を悔しく思っていました。仕事が出来ないと言われてプライドがズタボロです。

そんな時事件が起きたのです。

この日は前日までお祭りの準備をしていたたので低い土地で皆が集まっていました。

しかし、急に大雨が降り出し一面がぬかるみだしました。

「あー、どうしよう。足が思うように進まない、歩けない」

「キャー、子供たちが逃げ出せなくなっている」

「どうにか逃げなくては」

村人達が一斉に逃げ出してしまったせいで雑踏事故になってしまいました。

この日の夕方に男が帰ると半分近くの村人が亡くなってしまったと報告を受けました。

「あーどうしよう。私は雨が降ることを分かっていたのに皆に注意を出せなかった」

男は心に大きな傷を負ってしまい、引きこもってしまいました。

生き残った村人が男を慰めるために家に行きましたが、男は家から出てきませんでした。

前の村長が家を訪ねると、男はあっさり前の村長を招き入れました。

「何故、私を村長にしたのですか?絶対何か思惑があるでしょ?」

「君が適任だと思ったからだよ。思惑なんてないさ」

男は、前の村長を睨んで

「あなたには副村長を辞めて貰います。村長命令です」

男は村長の特権を使い、前の村長を副村長の座から降ろしました。

「何故だ!そんなことして誰がついてくる!」

前の村長は怒ってしまい、出ていきました。

次の日、副村長がいなくなったので、選挙をして副村長が決まりました。

仕事の内容を逆にして、男が実務を担うようになりました。

その後、風を読む男は風の動きで雨を予測し、村人達を守ることが出来ました。

お終い